東京高等裁判所 昭和37年(ネ)3027号 判決
本件土地及び前記儀平所有地はいずれも罹災地であつたが、昭和二〇年九月頃高部清は儀平に対し土地の一部をバラツク建設のため賃借したい旨申し込み、昭和二〇年一〇月一日前記のように、右土地のうち約九二坪につき賃貸借契約がなされたが、当時第一審原告らは疎開先に居住中であつたが、早晩浜松市に帰来することが予想されていたため、これに備える必要上本件土地を長期にわたり賃貸する意思はなかつたこと、しかし、高部清がバラツク建設の目的で短期間賃借したい旨申し入れたので、儀平はこれに応ずることとしたが、慎重を期し、契約書の作成に当つては、高部清の賃借地利用をバラツク建設のためのみと限定し、右土地に都市計画による区画整理事業が施行されるときは一か月以内に地上建物を収去して土地を明渡す、かかる事情のない場合は契約成立後三年で契約は失効する等の条項を加え、本件賃貸借が一時使用の目的を有することを明らかにしたことを認めることができる。原審及び当審における控訴人高部俊一本人の尋問の結果中、右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
以上認定の事実によれば、儀平が高部清との間でなした右賃貸借は、その期限を、都市計画による区画整理事業が実施されるまでか、賃貸人に目的地使用の必要が生じて明渡を要求するまで、又は契約締結後三年とするものであつて、このような賃貸借は借地法九条の一時使用のため設定されたことが明らかなものと解するのが相当である。
特別都市計画法に基づく土地区画整理事業として換地予定地の指定が行なわれ、換地予定地及び従前の土地の所有者にその通知がなされたときは、爾後の両地の使用収益関係は同法一四条によつて規制されるのであるが、他方区画整理事業は換地処分がなされるまで相当長期間を要し、その間に地上建築物の移転、撤去等従前の土地の現実の使用状態に変更を加えることが予定され、換地予定地の指定もかかる整理事業の円滑な進捗を図ることにある、(このことは、土地区画整理法第九九条によつて規制される同法に基づく仮換地の指定についても同様である。)。従つて、従前の土地上の賃貸借関係に「都市区画整理事業の実施されるまで」との期限が付されていた本件にあつて、換地予定地の指定があつたからといつて、それにより直ちに地上建物の所有を目的とする賃貸借の期限が到来するというのは相当ではなく、換地予定地指定の基本たる換地計画が確実となり、地上建物の移転、撤去等の土地使用状態の現実の変更が可能となつた時点において、始めて右の期限が到来するものというべきである。
(岡部 川上 大石)